お嬢様について
・お嬢様
お金持ちの家庭の娘。年齢は11～16歳で、髪型は金髪縦ロール。または黒髪ロング。睫毛が長く、栄養のある食事を摂っているためか、髪質もつややか*1。色白。
留守がちな両親にかわって使用人（老年男性、中年女性）に面倒を見てもらっている。
成績優秀で恵まれた美貌から学校では同性の同級生からの人気が高く、友達としてというより羨望の対象として扱われている。ピアノ、バイオリン、書道、学習塾、ムエタイなどの習い事を掛け持ちしているため、放課後遊んだりできない。
実は日曜の朝に放送している女児向けアニメが大好きで、ステッキやドレスなどのグッズを持っており、自分が生まれる前の過去作も一通り見るほどの熱狂的なファンだが、「お嬢様が女児向けアニメを好んでいるのは子供っぽくてはしたない」という思いから、使用人以外にはひた隠ししている。
・お嬢様（SR)
お嬢様が自室で少女向けアニメーション「魔法少女○○」のコスチュームを着て、鏡でうっとりとしている姿。性能はお嬢様（R）と大差ないが、期間限定のイベントでしか入手できないため高レートで取引される。
・お嬢様（闇）
お嬢様が闇落ちした姿。日光にさらされない部分を除いて肌色が褐色に変化している。お嬢様（黒髪ロング）の場合は金髪になっている。背中からは蝙蝠のような羽が生えており飛行能を有する。
性格は変化しており、高慢さが肥大化した他、人間への不信感が大きくなっている。「信用できるのはコレ*2だけ」とかのたまう。
主人公との絆の力でお嬢様（光）に戻るが、（闇）の力をコントロールすることができ、変身形態のひとつとしてお嬢様（闇）にも変身可能。防御よりの性能の（光）と比較して攻撃型の（闇）のほうが戦闘での使い勝手が良かったので、こっちの方が出番が多かったりする。
・お嬢様（混沌）
お嬢様がお嬢様（光）とお嬢様（闇）の両方の力を併せ持った存在。
攻防スキがなく、片方の属性を無効化する相手にも攻撃が通る。
相反する属性の波動を与え、空間を断絶する「ゴージャス・デンジャラス」を耐えられたものはいない。*3
・お嬢様（量産型）
お嬢様の髪の毛からDNAを抽出し、クローンとして大量生産された存在。
狭い部屋で培養すると「お金持ちである」というお嬢様のアイデンティティが崩壊し、発狂してしまう問題から、現在は視覚、聴覚の発達が認められた段階で*4VRゴーグルを装着させ、「お屋敷」と呼ばれる仮想空間で生育させる。この仮想空間でのお嬢様（量産型）育成様式は「オヤシキ・プロトコル」と呼ばれ、お嬢様培養のスタンダードである。この育成様式の優れた点は拡張性の高さで、仮想空間を操作することで、お嬢様（量産型-幼体）にさまざまな体験、学習をさせることができる。VR空間のインターネット・プラットフォームを通じて外界の者とのコミュニケーションを取らせることが可能となったが、お嬢様(量産型-幼体)が自己の環境に違和感を覚えてはいけないため、試験運用の段階である。
食事は研究所が合成した粘土質の完全栄養食を形状を変えて食べさせている。お嬢様（量産型-幼体）は本物のステーキや本物の寿司を食べたことがないが、ステーキや寿司を食べたと"感じる"ことができる。動脈に装着された注射プラグから、各種神経伝達物質、ホルモンを投下される。コンピュータで仮想空間を管理され、体内状況を管理されたお嬢様（量産型-幼体）は通常2年で10歳のお嬢様となる。
お嬢様（幼体）の高速育成は成長ホルモンの過剰投与や代謝速度の加速によって実現されるが、高速育成の負荷としてお嬢様（量産型）は他のお嬢様と比べて短命である。近年の研究によると細胞の分裂周期が異常にクロック・アップされ、がん細胞の出現率がお嬢様（無印）より高くなっていることが分かった。お嬢様の量産化における今後の課題は高速育成による負荷をいかになくすかに注視されており、現在は、お嬢様から分離した細胞を組織ごとに培養し、組み立てるという、お嬢様（ビルド）の制作が試みられている。その場合、お嬢様に知識を導入するのに電気信号を用いて脳に直接データをインストールする様式をとることになるが、言語ベースで抽出されたお嬢様（データ）はお嬢様（無垢）にインストールしても言語の記号表現のネットワークのみがあるだけで、シニフィアン（金という漢字や「きん」という音）が定着してもシニフィエ（キラキラと輝く金の「色」）との対応がうまくいかず、「無色の緑色の考えが猛烈に眠る」といった文法は正しいのに意味が支離滅裂な言葉を発するだけであった。
お嬢様言語学者とお嬢様情報学者の開発したお嬢様（電脳）はチューリング・テストを通過するほどの再現性がある。さらに学習能力もあり、いくつかの質問から未知の単語の品詞がわかるだけでなく、自らの単語・ネットワークの適切な位置に新しい単語を組み込むことができる。
このお嬢様（電脳）に身体制御機能を追加してお嬢様（無垢）にインストールすることが可能になればお嬢様（ビルド）は画期的なお嬢様量産様式になることが期待される。
アップデートされたお嬢様（電脳）がお嬢様の再現にとどまらず、お嬢様（イデア）になることを予見するお嬢様学者も現れた。お嬢様（電脳）がお嬢様を超越した汎用的お嬢様性を手に入れることをお嬢様（シンギュラリティ）と呼ぶ。しかし、お嬢様（電脳）はお嬢様と近似するための存在であり、お嬢様よりも"お嬢様"らしくなった場合、果たしてそれはお嬢様らしいといえるのか、という一種のパラドクスであるとお嬢様哲学者は指摘する。
お嬢様（量産型）はお嬢様のバックアップである以外に、お嬢様の生態やお嬢様語の研究に使用される。お嬢様（量産型）は投与される栄養素や、神経伝達物質の制御等により"ハード面"で、VR空間の体験（例えば、両親が6歳（設定）で死んだり、猫を飼ってみたり、その猫が死んだりする）の変化により"ソフト面"で実験的にアップデートされる。お嬢様（量産型）の新規株の培養は夏至と冬至の年二回に行われ、大型なアップデートは2年に一回行われる。そのタイミングでお嬢様（量産型-型落ち）は施設で働くか、外部で非公開に出荷される。お嬢様倫理委員会のはたらきにより、お嬢様（量産型）の待遇は意外と悪くなく、所帯を持つ者もおり、短命だが平均的な国民よりも幸福な一生を過ごす。
・お嬢様（戦闘用）
お嬢様（量産型）と並行して製造されたお嬢様。お嬢様生産工場を運用するにあたって必要な資金を獲得するために製造が開始された特殊なお嬢様。職員はお嬢様（銭ゲバ）と呼ぶ。お嬢様から分離したお嬢様（ゲノム）に高身長、脳容量の増大、遺伝疾患の消去などの遺伝子編集が施される。
余談だが、お嬢様(量産型）もゲノム編集が行われている。これはお嬢様倫理委員会の「お嬢様・非同一ゲノム原則」によって、お嬢様のゲノムの非翻訳領域(遺伝情報として生体に影響しない塩基配列）に各お嬢様に特有のシリアルコードを入力している。ATCGの4塩基による4進法で番号を管理している。
お嬢様（量産型）の残した細胞からDNAを抽出し、特定のシリアルコード領域を解析すればどのお嬢様か特定できるため、倫理的というより合理的理由で採択された。
お嬢様（量産型-一期生）は20名で暗号化されたゼロの使い魔（1巻）を20分割し、遺伝情報としてもっている。遺伝子処理の棒雑さから2期生以降はただのナンバリングとなっており、お嬢様（量産型-一期生）は関係者からは輪読者<ゼロ・ホルダー>と呼ばれる。
お嬢様（戦闘型-幼体）は通常のお嬢様と異なった教育カリキュラムを受ける。中国語、英語、ロシア語を学習し、実践空手やテコンドーなどの体術を学ぶ。ナイフや銃をはじめとした武器の使用方法を軍人からたたき込まれ、"組織"への忠誠心を刷り込まされる。
お嬢様（戦闘型）は準速成長（一般的な8歳児と同等の肉体まで量産型と同様に育て、その後通常の速度で生育する）が施されるため、お嬢様（量産型）より比較的長寿であるが、過酷な任務中に命を落とすケースが多い。幼体時のホルモンの制御により、筋肉質で長身なことにコンプレックスを抱くものも多く、豊満な乳房を持つ者はカウンセリングに向かないとされる*5。
【参考文献】
坪井裕太ほか2名(2017)『深層学習による自然言語処理』講談社
小林雅一(2016)『ゲノム編集とは何か「ＤＮＡのメス」クリスパーの衝撃』講談社
相田祐（2002-2012)『GUNSLINGER GIRL』アスキー・メディアワークス
宝島社（編）（2018)『Sweet特別編集 My ベストヘア 2019』宝島社
