虚無らがえり

アニメ批評/エッセイ

学校の図書館でラノベを読ませてくれ

文学少女”と飢え渇く幽霊 (ファミ通文庫) | 野村 美月, 竹岡 美穂 |本 ...

 先日、部屋の掃除のついでに漫画を売ろうと思って自宅近郊の古本屋へ行った。

そこは地元にいた頃あしげく通っていたブックオフよりも品ぞろえが豊富で、CDやDVDもいろいろと置いていた。「なんか面白いCDでもないかな。仲間由紀恵のやつとか」と眺めてたらサブカルの雰囲気をものすごくまとった女性(ティファニーでそういうフレーバーの香水がある俺は知ってる)が洋楽のコーナーを漁っていて趣を感じた......のは全く関係ないんですけど、学校の図書館でラノベを読ませてくれませんか。

その店、『ベン・トー』とか、『とらドラ!』が1冊50円で売ってて、しかもセールで半額になってたんで4冊100円(税抜き)で買えちゃうんですよね。さすがに「買っちゃおうかな.....」と思ったんですけど、結局宮木あや子の『官能と少女』だけにしました。なんでかというと、今ラノベを手に入れたとして、それを学校の図書館で読むことはできないからです。学校の図書館でラノベを読ませてくれ。

 

ベン・トー 全15巻セット (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー 全15巻セット (スーパーダッシュ文庫)

  • 作者:アサウラ
  • 発売日: 2014/06/16
  • メディア: 文庫
 
とらドラ! 文庫 全10巻 完結セット (電撃文庫)

とらドラ! 文庫 全10巻 完結セット (電撃文庫)

  • 発売日: 2010/11/01
  • メディア: 文庫
 

ここでいう「学校の図書館」には大学の図書館は含まれない。というか大学の図書館で本読んでる人いるんですか?みんなラップトップカタカタしてレポート書いてるだけじゃねえか。なんなんだお前ら、モンスターエナジー持ち込むな。缶飲料禁止だぞ、ここ。複素解析の課題をやるな。マセマを見ながら例題を解くな。俺が使えなくなるからマセマの参考書は借りるな。純粋にラノベ読んでる人、いないじゃねえか。グループスタジオ一生使わん。帰ろ。

ね、「学校の図書館」にはパソコンとかスマホとか持ち込むやついないからさ、大学の図書館は違うんですよ。大学の図書館でなく「学校の図書館」でラノベを読ませてくれ。

 

 

 

 給食の時間が終わり、友達との適当な雑談を切り上げ一人で図書館に向かう。片手に一通り読み終わった『文学少女と飢え渇く幽霊』を持って教室のドアを開ける。図書館独特のワックスの匂いがする。返却カウンターに向かって歩きつつ、それとなくラノベコーナーをチラリと眺める。(ちくしょう、『デュラララ!!×6』いつになったら帰ってくるんだよ。表紙がえっちだからって独占すんなよな。)本を返却する。今日の図書委員は1年生だろうか。体に対して制服が大きすぎる気がする。『デュラララ‼』、借りられちゃってるし......帰ろうかな......。ふと、読書スペースに誰かいることに気づく。

 本田さんだ。本田さんは隣のクラスにいる眼鏡をかけた女子生徒だ。それであの、「おさげ」っていうの?髪の毛クルルしたやつが、ふたつ垂れ下がってる、アレ。あの髪型......なんかな?そうだよね、えっ?違うかもしれんわ。自信なくなってきちゃった。あのアレが似合っているおとなしい感じの生徒だ。図書館でよく会う。1年のときは同じクラスで後ろの席にいたけれど、あんまり話さなかったなぁ......。そういえばプリント回すときにちらっと見えた字がやけにキレイだった。習字通ってるのかな。いやいや。俺、通ってたけど全然字上手くならなかったじゃん。などと考えてたら本田さんが、本(『The Manzai』)から目をそらしてこっちを見た。このまま帰るのも気まずいのでなにか読もう。『バカとテストと召喚獣』に伸びかけた手をひっこめ、『キノの旅』を手に取った。絶妙な距離感の席を見つけて腰を掛ける。

ページをめくる『1話 人の痛みがわかる国』。星新一みたいだな。何ページ読んだだろうか、相棒のキャラがしゃべるバイクということに気づいたころ、本田さんが口を開いた。

---「私も、それ、......すき。」急な発言に戸惑う、まだぜんぜんぜん読んでないからどう返せばいいかわからない。まだオチがわからないし、これ1巻なんだけど。「私"も"」ということは「俺がこの本が好き」という前提の発言ということになる。でも「俺も!」って返すのもヘンだよな。やべえどうしよ。

---「そうなんだ。ちょっと、まだ読んでないから、よくわかんないけど......。」悪手。めっちゃ興味なさそうな返事をしてしまった。もうちょいなんかあるだろ。これ家に帰って反省シミュレーションするやつだ。最悪すぎる。

---「あっそうだよね。ごめん。」本田さんはしゅんとしてしまった。しばらく無言でお互い本を読んでいたが、本田さんはスクールバッグ(黒子のバスケのアクリルキーホルダーがついている)に本をしまって出ていってしまった。『キノの旅』のつづきは、まだ読んでいない。

 

 

みたいなことさせてくれ。学校の図書館でラノベを読んで、そんな感じのことが起きてくれ。表紙がちょっと恥ずかしいからなるべく机と水平になるような体勢で『ロウきゅーぶ』読ませてくれ。

中学時代、本田さんとかいなかったから。やたら2ちゃんの話をする声がデカい図書委員しかいなかったから。助けてくれ。

 

 

「レンタル彼女」のオプションで「レンタル文学少女」やってくれねえかな。そういうデートってことにすれば割といけそうじゃんね。あとは公立中の図書館を抑えられるかだな。最悪市立図書館でも雰囲気は出る.....のか?いや、休日ばったり学外の図書館であったとしたらあるいは......。もはや学校の図書館じゃないけど。私服が意外とかわいくてテンション上がるパータンだとすれば、あるぞ。ありますねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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おわり