虚無らがえり

アニメ批評/エッセイ

『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』感想

つくしあきひと漫画原作。小島正幸監督。キネマシトラス制作。2020年公開。富田美憂(リコ)、伊瀬茉莉也(レグ)、井澤詩織(ナナチ)、プルシュカ(水瀬いのり)演。

評価★★★★☆4(原作既読)

ネタバレあり

 

ほのぼのとした絵柄とは裏腹に残酷な展開が多く、作者の性的嗜好が詰まった名作冒険漫画『メイドインアビス』の劇場映画。タイトルから察せられるように「ボンドルド編」をまるまるアニメ化した感じ。僕は原作漫画は読んだことがあり、テレビシリーズも全話見たので予習としては十分だった。今作は初見の人向けの解説パートは全く、「アビスの呪い」とか「六層」とか「遺物」とかいった用語が飛び交うため、原作を知らない人には楽しめないと思った。1時間45分でボ卿編を見せなければならないという制約があるので、そこはしょうがないってことで。原作からの改変もなく、見ていて違和感を覚えるシーンはなかった。「パパ棒」のくだりとか細かいところもしっかり見せてくれたので満足した。

手を抜いたように見えるシーンは無くて、戦闘シーンも迫力があり、作画はよかったと思う。背景も気合が入っており、雄大なアビスの景色を美しく描いていた。また、リコたちは手描き絵で描かれているのに対し、ボンボルドや祈り手たちをCGで動かしていて、それがいい意味で浮いていて"異物感"を醸し出していてよかった。おとぎ話のような、スチームパンク風のリコたちのアイテムと比較してボンボルドの装備が近未来的でカッコいいのだが、アビスの"祝福"によって恐竜っぽくなるとCGから手描きにシフトしていて巧いなと感じた。

ストーリーについては原作に忠実でなかなかエグい。プルシュカがリコたちと仲良くするとてもかわいくて和むシーンでも先の展開が知れてしまうのでとてもツラい。レグの解体シーンもあるのだが、アニメ化にあたって声が付くと、声優の演技もとても良くて臨場感があり一層痛そうなシーンになっていた。個人的に「カートリッジ」になったプルシュカがクパクパ動くのが映像化で一番の功績だと思った。漫画だといまいちどうなっているかわからない「カートリッジ」が、本当に"生きている子供"を加工しているという説得力が増してボンボルドのえげつなさをひしひしと感じた。でもカッコいいんだよな~、黎明卿。音声加工でロボ声っぽいとことか、すき......

最後に、この映画は冒頭におまけパートがあるのだが、エイプリルフールネタだった「マルルクちゃんの日常」が"見る入場者特典"として公開される(4週かけて4話公開)。1/17公開の映画ということで第1週の「#1おねがい」を観ることができた。前日にさんざん飲んだのだろうか、眠りこけているオーゼンをマルルクが起こそうとするお話なのだが、映画始まって数分でマルルクちゃんが、エッッッッッッなことになってびっくりしてしまった。ちょうどよいエッッッ具合で本当に「エッッッ」っと思った。もしかしたら口から洩れてたかもしれない。

円盤特典で「マルルクちゃんの日常」全4話収録してほしい。ovaで30分アニメとか作ってくれるとなおうれしい(貪欲)。そしたら買いますんで、どうぞお願いします。